写真をやっていると「RAW(ロウ)」という言葉を耳にします。
「RAWで撮ってPCで現像する」
なんかちょっとカッコいい響きじゃないですか?
プロカメラマンやハイアマチュアの中には「RAWでしか写真を撮らない」という方もいます。
もちろん個人の自由ですから全く構わないのですが、写真を始めたばかりの人や自称初心者の方には「写真撮影上達への近道」として、僕はJPEGで記録することをオススメします。
ちなみにそういう僕は今もJPEG派です。
というわけで、今回のテーマは「RAWとJPEGの関係」。
RAWとJPEGは何が違うのか?
RAWデータはカメラ内で画像処理エンジンによってJPEGとして保存されています。
今回はあなたも(たぶん)好きな「カレーライス」に例えてRAWとJPEGの違いをわかりやすく説明します。
RAWとは「生」という意味
刺身(生の魚)のことを英語で「RAW FISH」というようにRAWとは「生」という意味です。
では、画像(写真)において「生」とはどういうことなのでしょうか?
「フルサイズのイメージセンサー(撮像素子)でなければダメなのか?」という記事で書きましたが、センサー(撮像素子)は1画素ごとに入ってきた光の量に応じた電気信号を発します。
そして「スマホもパソコンもテレビも実は3色しか使っていない」という記事ではそれぞれの画素の前にRGB3色のフィルターをつけて光を色の成分ごとに分けて、最終的にカラー写真にすると書きました。
つまり、2,000万画素のセンサーの場合、シャッターを切ってセンサーに光が入ってきた瞬間に2,000万個の画素がそれぞれ光の量と色の情報を発生することになります。
そして、その2,000万個のそれぞれの情報だけを「そのまま」記録したものがRAWデータです。
一眼レフカメラやミラーレスカメラではこのRAWデータのまま記録することができますが、コンパクトデジカメもスマホも(記録されないだけで)RAWデータが必ず発生しています。
写真をカレーライスに例えると・・・
ところで、あなたはカレーライス好きですか?
カレーライスを嫌いな人はあまり多くはないと思うし、僕は大好きなのでよく写真をカレーライスに例えます。
もしカレーライスが嫌いなら、牛丼など気軽に食べられる料理に置き換えてもらってもOKです。
RAWデータとは、カレーライスの材料であるジャガイモ、ニンジン、タマネギなどの食材ことだと思ってください。
これらの食材を見ただけで「これはカレーライスだ!」とわかる人はいませんよね?
クリームシチューやビーフシチューかもしれませんし、肉じゃがになる可能性もあります。
同じようにRAWデータもカレーライスになる前の材料(食材)の状態なので、このままではどんな写真なのかはわかりません。
そして、それらの電気信号の状態では各カメラメーカー独自の情報なので、例えばキャノンのRAWデータをニコンのカメラに入れても全く読み込むことができません。
「拡張子」という言葉を聞いたことがありますか?
「どんなアプリケーション(ソフト)で作ったか?」がわかるように、ファイルの最後に「.○○」と付くやつです。
例えばマイクロソフトの「ワード」というソフトで作成した文書には「.doc」、「エクセル」で作成した表には「.xls」などという拡張子が付きます。
この拡張子は別のPCなどで読み込もうとした場合に「どんなソフトで作成したか?」がわかるので、そのPCに同じソフトが入っていれば認識して立ち上げることができます。
なので、あなたがエクセルで作成した表などをメールに添付して送っても相手が読み込むことができるようになっています。
ところがこのRAWデータの場合にはカメラメーカー独自の情報なので、そのカメラメーカーのソフトが入っていないと、何の情報かわからなくてPCで読み込むことができないんです。
RAWデータを読み込むためには、あなたがカメラを購入した時に付属されていたソフト(DVD)から、もしくはインターネット上からダウンロードしてRAW現像ソフトをインストールする必要があるはずです。
このRAW現像ソフトが入っていないPCではRAWデータを読み込むことはできませんし、ソフトもメーカー独自のものなので、例えばキャノンのRAWデータをニコンの現像ソフトで読み込んだりすることはできません。
最近のPCでは主要なメーカーのRAWデータなら認識できるようなソフトが初めから入っていることもありますが、もし様々なメーカーのカメラを持っていて、一つのソフトで読み込みたい場合にはAdobeのPhotoshopやLightroomなどのソフトがあればメーカー問わず読み込むことができます。
何れにしてもRAWデータというのは、そのままでは「写真」としてみることができないデータで、カレーライスに例えると「ジャガイモやニンジンなどの食材」の状態になります。
RAW現像=料理
RAWデータのままではPC画面などで「写真」として見ることができないので、データを処理して「写真」として誰でも見れるような状態にする必要があります。
この「写真(画像)」として見られる状態が「JPEG」です。
JPEGの拡張子は「.jpg」。
この拡張子なら、PC、スマホ、タブレット、テレビ、カメラなどの世の中のほとんどの液晶画面で「写真」として認識できます。
そしてこのRAWからJPEGにする作業を「現像」と言います。
先ほど述べたソフトはRAW現像ソフトなどと呼ばれましたね。
カレーライスに例えるとジャガイモやニンジンなどの食材を使ってカレーライスにする。
つまり「料理」をする必要があります。
現像=料理
では、誰が料理するのか?
それはカメラの中に入っている「画像処理エンジン」というコックさん、もしくは「あなた自身」です。
例えば2,000万画素のデジタルカメラで撮影するとRAWデータが発生します。
それらのデータをRGBの色ごとに分けてそれぞれの色の成分ごとの写真を作り、重ね合わせて画像補完をしたり、色の調子を整えたり、様々な情報処理をすることで「写真」として見ることができるようになります。
この作業をしてくれるのが、カメラ内に入っている「画像処理エンジン」というコンピュータです。
誰でも美しい写真が撮れるカメラが欲しいですよね?
各メーカーはこの画像処理エンジンの開発にとても力を入れていて、美しい写真が撮れるようなカメラを販売しています。
簡単に綺麗な写真が撮れるカメラは売れますからね。
なので、ほとんどのメーカーがこの画像処理エンジンに名前(愛称)をつけて開発をしています。
あなたのカメラの画像処理エンジンにも名前がついていませんか?
これもカレーライスに例えてみましょう。
おいしいカレーライス=美しい写真
おいしいカレーライスを食べるには、優秀なコックさんがいるお店で食べれば良いのです。
簡単ですね。
優秀な画像処理エンジン=優秀なコックさん
つまり美しい写真を撮りたい(おいしいカレーライスを食べたい)ならば優秀な画像処理エンジンというコックさんに任せれば良いのです。
あなたのカメラはキャノンですか?ニコンですか?ソニーですか?もちろん他のメーカーかもしれません。
何れにしても、世の中にデジタルカメラという製品を発売している以上、どんなカメラも優秀な画像処理エンジンを搭載しています。
だって、綺麗な写真が撮れないカメラは売れませんから。
僕がRAWではなくJPEGで撮影する理由はこの優秀なコックさんを使うべきだと思うから。
でも・・・
そうです。
もしかしたらあなたは辛口のカレーが好きかもしれません。
誰にだって「味の好み」があります。
いくら優秀なコックさんが作った「一般的にはおいしいと判断されるカレーライス」だとしても個人の好みにまでは細かく対応することができません。
そういう理由から、自分でルーからカレーを作る人がいるように、「自分で料理」つまり画像処理エンジンを使わないで「自分で現像」する人がいるんです。
でも、よく考えてください。
それは「あなたの好み」ですよね?
一般的に受け入れられやすい味が一般的にはおいしいとされる味です。
つまり広く受け入れられるには「標準的な味」がベストです。
もちろん個性として自分の好みやこだわりを主張することは良いことですが、それが一般的なレベルから大きく逸脱してしまうと受け入れられにくくなります。
例えば、辛口のカレーは人気がありますが、超超超激辛カレーなどはごく一部の人にしかウケませよね?
それと同じで、極端な味付けは受け入れられづらいんです。
カレーライスを作るためのジャガイモやニンジンなどを使ってクリームシチューを作ることだってできます。
でもこれをカレーライスだと思う人はいないですよね。
カレーにはカレーの標準的な味、そしてその中でも好みがあるので、標準的な許容範囲の中に辛口や中辛、甘口などがあるのです。
そして、その標準的な範囲内での味付けの調整はコックさんにお願いできるのと同じように、画像処理エンジンに注文することが可能です。
メーカーによって呼び名は異なりますが、「仕上がり設定」などと呼ばれる機能で、写真の色を少し濃い目にしたり、淡くしたり、コントラスト(明暗差)を強調したり。(ピクチャースタイル、ピクチャーコントロール、ピクチャーモード、クリエイティブスタイルなどメーカーにより呼び名がいろいろあります)
とにかく自分で一から現像(料理)しなくても画像処理エンジンを使って自分の好みを(標準的な範囲内で)写真で表現することは可能なのです。
ピントを合わせてシャッターを切るまではあなたの作業です。
これは食材を得るための作業で、写真を撮る上で最も重要な腕前です。
上質な食材を適切な量で得ることができれば当然おいしい料理ができますよね。
そして、その食材を使って料理を作るのは画像処理エンジン、つまりコックさんの仕事です。
もちろんその料理をあなた自身ですることもできますし、料理が上手ならとびっきりおいしいカレーライスを作ることも可能です。
でも、それは写真の腕前というよりは現像、つまり料理の腕前という感じです。
言うまでもなく、総合的に全てのレベルが高い方がいいに決まってますが、とりあえず上質の食材を得ることの方が先に身に付けたいスキルです。
そして、その先は優秀なコックさんに任せてしまえば良いのです。
優秀なコックさん(画像処理エンジン)に任せたからといって、写真が下手になるわけでなく、むしろあとで現像などしなくてもその場で一発で美しい写真、つまりおいしいカレーが作れると言うことは、要するに写真が上手と言うことになるのではないでしょうか?
もちろんRAWデータで記録することは非常に良いことです。
上質な食材を手に入れておけばあとでじっくり時間をかけて料理することができますからね。
でもそれには料理(現像)も勉強する必要があるんです。
まずは上質な食材を得る技術、つまりその場の状況を読んで適切な設定で写真を撮れるようになりましょう。
私のようなヘボカメラマンがもらえるレベルの仕事であれば、RAWで撮影して後日現像して納品するのではなく「今すぐ納品してほしい」という場合がほとんどです。
ということは、撮影現場の状況を判断して適切な設定で撮影しなければならず、RAWで撮影するよりも早くて正確な判断が求められます。
現像やレタッチについては別の機会に記事にするつもりですが、そのような作業をしなくても良い写真、つまりJPEG一発撮影で綺麗な写真を撮れるような技術こそ「写真が上手」ということではないでしょうか?
ちなみに、一眼レフカメラやミラーレスカメラでは「RAW +JPEG」という記録方式もあります。
私は普段この方式で記録しています。
万が一、現像やレタッチが必要な状況になったとしてもRAWデータで記録してあればそれが可能だからですが、実際に仕事で撮影していてもJPEGで納品した後に現像し直すようなことはほとんどありません。
また、自分の作品としてWEBなどに使う場合にもRAW +JPEGで撮影したJPEGの方を少しレタッチする程度です。(星空の写真だけはRAW現像することが多いですが)
あなたが趣味として現像やレタッチも積極的に行う場合にはどんどんやってほしと思いますが、まだ写真を始めたばかりのレベルであればまずは現場で判断してJPEG一発で美しい写真が撮れるような練習を積み重ねるのが得策だと思います。
それこそが写真が上手に撮れるという技術ですから。
そして普通のコンパクトデジカメやスマホの多くはユーザーレベルを考えて、現像などが不要な(カメラ内で画像処理エンジンで現像して)JPEG画像のみの記録しかできないようになっているのではないでしょうか?
一眼レフカメラやミラーレスカメラの場合も含めて、JPEGで記録しておけばどんなデバイスでも見ることができますし、メールで送ったりSNSにアップロードすることも簡単ですし、素早い現場判断で良い写真を撮れるようになる練習にもなりますからね。
JPEGは画像データの圧縮方式
それではそんなJPEGに弱点はないのでしょうか?
実はJPEGとは「画像を圧縮する方式の名前」ですが、圧縮こそがJPEGの利点であり弱点でもあるのです。
今までも述べてきたように、JPEGとは「画像」としてどんなデバイスでも判断して見れるようにしてくれる拡張子です。
カレーライスの食材としてではなく、誰が見てもわかるような料理済みのカレーライスとして保存するのがJPEGです。
しかし、保存する時にデータ量を小さくするために「圧縮」されてしまいます。
圧縮の本来の目的はデータ量を軽くすることですが、圧縮率を大きくすればするほどデータ量が小さくなる代わりに画像が劣化してしまうのです。
JPEGは上書き保存を繰り返す度に圧縮されます。
これは必ず知っておかなければならない極めて需要なことです。
例えばあなたがレタッチを覚えたとします。
画像を自分好みの仕上がり(カレーに例えると味付け)にするレタッチをして、夜遅くなってしまったので続きは翌日にしてその日は上書き保存するとどうなるでしょうか?
JPEGなので圧縮されてデータ量が少なくなります。
そして翌日再びレタッチを続けて完成して上書き保存をすると、合計で2回圧縮されたことになり、さらにデータ量が少なくなると共に画質が劣化するのです。
プロカメラマンやハイアマチュアと呼ばれる人たちはこのことを知っているので、RAWで撮影して現像をしたがるのです。
だって、食材から始めれば劣化することはありませんから。
しかも、RAWの状態のまま現像やレタッチを進めれば作業の途中で保存する時にもRAWでの保存が可能です。
何度でもやり直して最後に完成した時だけJPEGで保存することで、画像を劣化させることなく、誰にでもどんなデバイスでも見れる画像が出来上がります。
しかし、これまで書いてきたようにこれは写真の技術というよりは「現像・レタッチ」つまり料理の技術です。
ですから、JPEGが圧縮方式であるという知識はもちろん必要ですが、だったらレタッチなどの作業が必要ないように始めから納得できる一枚を撮影すれば良いのです。
たとえ個人的に細かい好みがあったとしても優秀なコックさんである画像処理エンジンはその注文にも答えてくれる機能があります。
それらの機能を使いこなせるということは、取りも直さず写真を撮るのが上手ということに他なりません。
ちなみに僕はRAW +JPEGで撮影していると書きましたが、もしレタッチが必要な場合でも少しだけの調整ならJPEGの画像を「一度だけ」いじって上書き保存しています。
その程度なら、画像の劣化もあまりありません、というか全く分からないレベルと言っていいと思います。
僕はその時のゴールに向かって最も近いルートで行けるように考えています。
わざわざ遠回りすることも悪くはないかもしれませんが、余計なことを考えるよりも、単純な思考で撮影する方がチャンスを逃しにくいとは思いませんか?
そんな理由から僕はJPEGで撮影することをオススメしていますが、世の中には様々なご意見があると思いますので、その中の一つとしてとらえてもらえればと思っています。(決してJPEGでなけれならないと言っているわけではありません)
まとめ
長々と書いてしまいましたが、RAWとJPEGについてまとめます。
・RAWとは画素の情報をそのまま記録したもので写真として見るには専用のソフトが必要
・RAWデータをカメラ内の画像処理エンジンもしくは撮影者が「現像」してJPEGで保存することで様々なデバイスで見れる「画像」となる
・JPEGとは圧縮方式の名前で何度も繰り返して保存(圧縮)する度にデータ量が小さくなると共に画質が劣化する
注意
この記事ではわかりやすさを優先していますので、必ずしも正確な表現をしていないことや、あえて説明していない部分などもありますのでご了承ください。