シャッタースピードをコントロールして「動き」を表現する

基礎知識

レンズにある絞りは「穴の大きさを調整」することでセンサーに入ってくる光の量をコントロールできましたが、その穴を「開けておく時間」で入ってくる光の量をコントロールするのが「シャッター」です。

今回のテーマはその「シャッター」について。

時間をコントロール」するってちょっとカッコイイ響きだと思いませんか?

センサーに入る光の量を「時間」でコントロールすることで、表現方法の幅がかなり広がります。

絞りを変えることで「ボケ具合」を調整できましたが、シャッタースピードを変えることで「動き」を表現できるんです。

シャッターは絞りに比べると理解しやすい上にその効果は絶大です。

あなたも時間をコントロールできるようになって表現力を一段階上げましょう。

時間をコントロールするとは

絞りとシャッタースピードの関係はよく「バケツに溜める水道の水」に例えられます。

蛇口の開度を絞りだとすると、

・たくさん水が出ている時には絞りが開いている状態(F値が小さい)
・少ししか水が出ていない時には絞りを絞っている状態(F値が大きい)

です。

この時、同じ量の水を溜めるにはたくさん水が出ていれば短時間、少ししか水が出ていなければ長時間出しておけば良いですよね。

この水が出ている時間をコントロールするのがシャッタースピードです。

例えば10リットルの水を溜めたい場合、1分あたり5リットルの水が出ていれば2分で溜まりますが、1分あたり1リットルしか水が出ていなければ10分かかります。

ある一定量の水を溜めるには出ている量と時間に密接な関係があるように、絞りとシャッタースピードも非常に密接に関わり合っているのです。

ちなみに、1分と2分では2倍の時間差があるというのはすぐに理解できると思いますが、僕が写真教室をしていると時々分数の苦手な方がいらっしゃいます。

1/60秒と1/125秒ではどちらが短い時間(速いシャッタースピード)か?

もしこの比較が苦手な方がいましたら、分数の場合は分母の数値が大きい方が短い時間(速いシャッタースピード)になります。

また1/125秒のことを「シャッタースピード125で」とか言ってしまうこともあり、わかりづらくしてしまっているかもしれませんね。

僕も表現には注意します。

シャッターの種類

シャッターの種類は主に

・フォーカルプレーンシャッター
・レンズシャッター
・電子シャッター

の3種類があります。(両方の機能を備えたカメラもあります)

フォーカルプレーンシャッターとレンズシャッターは電子シャッターに対して機械式(メカニカルシャッター)と言われることもあります。

また、レンズシャッターは文字通りレンズに搭載されていますが、フォーカルプレーンシャッターと電子シャッターはセンサー部にあります。

どのシャッターでも共通して言えることは、センサー面の各画素(フォトダイオード)に平等な時間光を取り入れられるようにしなければならないことです。

センサー面の場所によって光が当たっている時間にバラツキがあると部分的に明るさの異なる写真になってしまいますからね。

レンズと違ってシャッターは選ぶことができませんから、あなたの持っているカメラに搭載されているシャッターを理解して付き合っていくしかありません。

それでは各シャッターについて簡単に解説していきます。

フォーカルプレーンシャッター

フォーカルプレーンシャッターは他のシャッターに比べると構造が複雑で大きいので、主に一眼レフカメラやミラーレスカメラなどのレンズ交換式カメラに搭載されています。

もしあなたが一眼レフカメラを持っていたら説明書で調べてみてください。

おそらく「上下走行式フォーカルプレーンシャッター」などと書いてあるかと思います。

あなたが想像する「シャッター」はこんな感じでしょう。

それでOK。

これとかなり近い構造になってますので間違ってないですよ。

センサーの前にこんな感じのシャッターが付いているんです。

ただ、このお店のシャッターは開ける時は下から上に、閉める時は上から下になりますよね。

こうなると、開ける時には下の方から先に光が入って、閉める時にも最後まで下側の方が開いているので、下側の方が長い時間光が入ってくることになってしまいます。

これだとセンサーに当たる光の量にバラツキができてしまう(下の方が長い時間光が入ってくる)ので、フォーカルプレーンシャッターでは閉める時にはもう一枚別のシャッターを用意しておきます。

先に動くシャッターを先幕(フロントカーテン)、後から動くシャッターを後幕(リアカーテン)と言います。

そしてカメラの場合には下から上にではなく上から下に動きます。

具体的に説明しましょう。

シャッターボタンを押すと、まずは先幕が上から下に動いてセンサーに光が入ります。

 

続いて後幕が上から下に閉じていきます。

こうすることでセンサー全体に均一な時間光を当てることができるようになるんです。

しかも!

この構造だと例えば1/4000秒とかの超高速シャッタースピードが実現できます。

先幕が走り始めた直後に後幕が追いかけることで細い隙間(スリット)を作り、そのスリットがセンサー上を走っていけば「ごく短時間だけ」しかも「均一に」センサーに光を当てることができます。

シャッター幕を全開してセンサー全体に一度に光を入れる必要がないんです。

高級機種になると1/8000秒などの超高速シャッタースピードが可能です。

いつも思うんですが、この構造考えた人すごいですよね。

ただ、フォーカルプレーンシャッターならではの欠点もあります。

それは、センサーが全開するようなシャッタースピードじゃないとフラッシュ(ストロボ)が使えないんです。

フラッシュの発光時間は一般的なシャッタースピードよりもかなり短い時間です。

なので先ほどの高速シャッターの原理でスリットが走っている時にフラッシュを使うとスリットの部分にしか光が当たらないので、写真の中に明るい横帯が入ってしまいます。

これだと具合が悪いので、実際にはセンサーが全開した時にフラッシュが光るようになっています。

逆にいうと、センサーが全開になるような「遅い」シャッタースピードじゃないとフラッシュが使えないということになります。

このフラッシュが使える「遅い」シャッタースピードの中で最も「速い」シャッタースピードのことをストロボ同調速度などと言ったりして、高級機種でも1/250秒程度です

ただ、フラッシュの発光時間を長くすることも可能(FP発光と言います)なので、その場合にはもっと速いシャッタースピードでフラッシュを使うこともできますが、長くフラッシュを分発光させるフラッシュのパワーを制限せざるを得ません。

このようにフラッシュ使用時にはある程度制限がありますが、それよりも精度の高い高速なシャッタースピードが使えるので、動いている被写体を写し止めたいスポーツシーンなどを撮影するカメラマンは一眼レフカメラを使っていることが多いのだと思います。

レンズシャッター

レンズシャッターはコンパクトデジカメなどレンズ交換ができないカメラに搭載されていることが多いです。

文字通りレンズの付近に搭載されていて、絞りのように穴を開いて閉じるような構造になっています。

メリットとしてはフォーカルプレーンシャッターのような大掛かりな構造ではないため、音も静かでシャッターによる振動も少ないです。

しかし、絞りの大きさにも左右されますが、構造上速いシャッタースピードを実現することが難しいようです。

1/500秒程度までが一般的なようです。

一眼レフカメラとは異なり、コンパクトデジカメの説明書などにはシャッターの構造まで書いてないことが多いことや次に説明する電子シャッターの方が主流になっているので、私もあまり詳しいことを知りません。

すみません。

説明書を見て使用できるシャッタースピードが1/2000など比較的高速であればレンズシャッターではなく電子シャッターを搭載している可能性が高いと思います。

電子シャッター

電子シャッターはこれまで説明した2つの機械式シャッターとは異なります。

そもそも一眼レフカメラ以外の光学ファインダーを持たないカメラは、センサーに光を取り入れて常に液晶画面(または電子ビューファインダー)に映像を映し出している必要があります

このため、シャッター幕でセンサーを覆うわけにはいきません。(ミラーレスカメラなどでフォーカルプレーンシャッターを使う場合には一瞬シャッター幕で閉じます)

この状態で指定したシャッタースピードの時間分の信号を記録してしまうのが電子シャッターです。

物理的に動くものがありませんので、原則として音も振動もありません

スマートフォンが電子シャッターの良い例ですが、いたずら防止のためにわざとシャッター音(効果音です)が出るようになっています。(日本だけだと思うけど)

この方式だと、1/16000秒などフォーカルプレーンシャッターよりも速いシャッタースピードを使うことも可能ですし、フラッシュ使用時もフォーカルプレーンシャッターより速いシャッタースピードを使うことが可能です。

このようにメリットばかりかと思われがちですが、電子シャッターにも弱点はあります。

現在多くのデジカメに使われているセンサーはCMOSと言う方式で、これは一つ一つの画素の情報を順番に読み込んでいきます

なのでセンサーからの信号を読み込むのに時間がかかり、例えば上の列から順次信号を読み込むことで、若干ですが時間のズレが生じます。

このため、画像が歪んで見えることがあります。

速く動く被写体を撮影した時など、グニャッとしてしまった経験はないでしょうか?

これはローリングシャッター歪みとかこんにゃく現象などと呼ばれます。

 

一方で、以前は多く使われていたCCDセンサーの場合には全ての画素の情報を一度に読み込むことができるので、原理的にCMOSセンサーのような歪み現象が起こりません

このような一度に全画素の情報を読み込む電子シャッター方式をグローバルシャッターと言ったりしますが、CMOSセンサーでも歪みを抑えるためグローバルシャッターが開発されているようです。

他にもこれまで書いてきたいくつかのデメリットを克服するためにハイブリッドシャッターなど様々な技術開発がされています。

何れにしても、レンズとは違いシャッター方式を自分でチョイスできるわけではありませんので、初心者のうちはあまりシャッターについて突っ込んだ知識は必要ないと思いますよ。

っていうか僕もそんなにシャッターの構造にこだわってはいません。

まとめ

はっきり言って、初心者のうちは(僕は今でも)シャッターの詳しい構造などは写真を撮る上でそれほど重要ではありません。

ここで覚えておいて欲しいことは、

・シャッタースピードはセンサーに当てる光の「時間」をコントロールする機能
・シャッタースピードをコントロールすることで「動き」を表現できる
・フラッシュを使う時にはシャッタースピードに制限があることがある

このくらいが分かっていれば問題ないかと思いますよ。

注意
この記事ではわかりやすさを優先していますので、必ずしも正確な表現をしていないことや、あえて説明していない部分などもありますのでご了承ください。