1本持って損はしないマクロレンズはオールマイティ

基礎知識

小さなものを大きく写すためにはどうすればよいでしょうか?

方法は二つ。

・出来るだけ近づいて撮る
・視野の狭い(焦点距離の長い)レンズで撮る

このどちらかしかありません。

そして、上記二つを両立できれば、より拡大写真が撮れることが想像できると思います。

このような、

小さな被写体を大きく写すために、近づいてもピントが合うようなレンズをマクロレンズと言います。

僕もマクロレンズは大好きでよく使っていますし、1本は持っておくべきレンズとしてオススメです。

というわけで、今回はマクロレンズについてわかりやすく説明します。

マクロレンズとは

繰り返しになりますが、マクロレンズとは「極端に近づいてもピント合わせが可能(接写)なレンズ」のことです。

この極端に近づいてもピント合わせな可能な機能のことを「マクロ(接写)機能」とも言ったりして、一般的なレンズでもスイッチなどで切り替えられるマクロ機能を持たせているレンズもあります。

なぜそんな特別扱いをするのかと言うと、ピントを合わせる際にはレンズもしくはレンズの一部を前後に動かすことでピント面を移動させます。

ちなみに、昔のレンズはピント合わせをすると(ズームとは別に)実際にレンズが伸び縮みしていたのですが、最近のレンズではIF(インナーフォーカス)といって、レンズ内にある一部のレンズだけを動かすので外見は伸び縮みしません。

ピントが「面」で合うことを理解すれば複数の被写体に同時にピントを合わせることができる

何れにしてもピント合わせをする時にはレンズ(の一部)を動かすのですが、この時にごく近くにピント合わせをするにはレンズ(の一部)をかなり大きく移動させる必要があるのです。

そうなると、レンズの可動部分を大きくしなければならずコストもかかります。

さらに、使用頻度のそれほど高くない接写機能を持たせることで、普段よく撮る最も使用頻度の高い距離での撮影時にオートフォーカスが遅くなる(駆動距離が長いので)こともあります。

そんな理由から接写に特化したマクロレンズや(スイッチで切り替えられる)マクロ機能を持たせたレンズがあるのです。

このように被写体を大きく写すためには近づいて撮影できるレンズが必要ですが、もう一つ視野の狭い(焦点距離の長い)レンズを使うことも有効です。

なので、視野の狭い(焦点距離の長い)レンズで近くにピント合わせができればさらに拡大撮影ができるのですが、焦点距離の長いレンズはレンズ自体も長くなります。

その結果、ピント合わせをするためのレンズ(の一部)の駆動距離も長くなってしまいます。

そういうわけで焦点距離の長いレンズで、なおかつ近くにピントを合わせるというのは難しいのです。

逆に広角レンズ(焦点距離の短いレンズ)はレンズ自体も短く、ピント合わせのためにレンズ(の一部)を動かす距離も短くて済むので、広角レンズの場合は望遠レンズに比べて近くの被写体にもピント合わせがしやすいのですが、広角ゆえに被写体だけでなく周囲も写り込んでしまい、その結果小さいものを大きく写すことが難しいのです。

「あちらを立てればこちらが立たず」で何でも都合よくはできないんです。

ちなみに、スマートフォンはかなり近くにピント合わせできますよね?

例えば、僕が使っているiPhone7の焦点距離は3.99mm(35mm換算で28mm)だそうです。

一眼レフカメラなどからしたらありえないほどの短さ(超ウルトラ広角レンズ)なので、かなり近づいてもピント合わせが可能なんです。

撮影倍率

では、どのくらい大きく写せるのか?

この性能を「撮影倍率」と言いますが、多くのマクロレンズは「等倍撮影」という性能を持っています。

マクロ機能付きのレンズの場合には1/2倍などもう少し撮影倍率が低いかもしれません。(撮影倍率はレンズの説明書などに記載されています)

等倍撮影とは「センサー上に実際の大きさ(等倍)で写ります」と言う意味です。

これはセンサーサイズの記事で紹介したイラストですが、1円玉の直径は2cmです。

例えば、フルサイズのデジタルカメラに等倍撮影が可能なマクロレンズをつけた場合には画面内に1円玉がスッポリと入るような大きさで撮影できるということです。

APS-Cやフォーサーズなら1円玉が画面からはみ出るほどの大きさで撮影できます。

ですが、それ以上小さいセンサーの場合にはレンズ交換ができないコンパクトデジカメなので等倍撮影まで倍率を上げることができない場合が多いです。

ちなみにNikon1というシリーズのミラーレスカメラは1型センサーで、等倍撮影可能なマクロレンズも使用できますから、超拡大写真を撮ることも可能です。

また、一部のコンパクトデジカメは「顕微鏡モード」などといって、ものすごく近づいてもピントが会う機能を搭載しているカメラもあります。

「小さいものを大きく写す」という性能に関してはフルサイズよりもセンサーが小さい方が有利なことが多いですね。

フルサイズのイメージセンサー(撮像素子)でなければダメなのか?

撮影距離

実際の撮影時には知っていても得することは少ないかもしれませんが、

・撮影距離
・ワーキングディスタンス

という言葉があります。

撮影距離とはセンサー面からピント面までの距離
ワーキングディスタンスとはレンズ前面からピント面までの距離

です。

ちなみにセンサーの位置はカメラの外側からでもわかるようにマークが入っています。

 

例えばスマートフォンで接写する時、被写体までかなり近づくことができますが、自分やスマートフォンの影が入ってしまったり、トンボなどの昆虫に近づきすぎて逃げられてしまった、という経験はありませんか?

このように広角レンズで近づいて大きく撮ろうとした場合には、カメラや自分の影の影響が出てしまったり、被写体に逃げられてしまうことがあるんです。

逆にワーキングディスタンスが長いと遠くから大きく撮影できるので、そのような影の影響を受けにくかったり、昆虫など近づくと逃げてしまうような生物の撮影にも適しています。

撮影倍率が同じ「等倍」でも、焦点距離の長いレンズの方が遠くから同じ大きさで撮影できるのです。

マクロレンズは接写機能だけでない万能レンズ

マクロレンズ以外に、普通のレンズの前に取り付けて接写ができるようになる「クローズアップレンズ」というのもあります。

これは、いわゆる虫メガネのような感じで普通のレンズの前にねじ込み式で被せて使うものです。

クローズアップレンズをつけることで、より近づいてもピント合わせが可能になり、マクロレンズのように小さな被写体を大きく写すことができます。

しかし、クローズアップレンズをつけてしまうと、遠くにはピントが合わなくなってしまうという欠点もあります。

この点マクロレンズは接写だけでなく、最短撮影距離より遠くは全域でピント合わせが可能です。

そして、多くのマクロレンズは

フルサイズ用:60mmから100mm程度
APS-C用:30mmから60mm程度(60mmはフルサイズと兼用)
フォーサーズ用:45mm程度

となっています。(例外もあります)

この多くはフルサイズ換算にすると90mm前後になりますね。

35mm換算を含めてレンズの焦点距離・絞り・被写界深度を理解する

ここがマクロレンズのおいしいところで、フルサイズ換算で90mm前後の焦点距離とは人物のアップ(ポートレート)写真に向いていると言われる画角です。

さらにマクロレンズの解放F値はF2.8と明るいレンズである場合が多いです。

ポートレート専用の85mm/F1.4などのスペシャルなレンズはめちゃくちゃ高いのでなかなか買えませんが、マクロレンズなら僕にもなんとか買える価格です。

このためマクロレンズは、価格の割には、1本で超接写からポートレート、そして料理やモノなどのブツ撮りと呼ばれる撮影までオールマイティにこなせるレンズとしてとても重宝します。

あなたも1本持っておいて決して損はないレンズですよ。

まとめ

どうです?

マクロレンズ欲しくなりませんか?

では最後にマクロレンズについてまとめておきます。

・マクロレンズとは近づいてもピント合わせができる接写用レンズのこと
・等倍撮影とはセンサー上に実際の大きさで写すこと
・やや焦点距離が長いことで少し離れたところから撮影できる
・接写だけでなくポートレートやブツ撮りにも使えるオールマイティなレンズ

注意
この記事ではわかりやすさを優先していますので、必ずしも正確な表現をしていないことや、あえて説明していない部分などもありますのでご了承ください。