適正露出が適正ではないことを理解する

基礎知識

今回のテーマはズバリ「写真の明るさ」です。

これちょっと難しいですよ。

なぜなら「明るい写真」とか「暗い写真」って言いますが、それ何と比べてるんですか?

感覚的に「この写真は明るい」なんて言われても、それはあなたの感覚ですよね?

他の人が見たら「暗い」と感じるかもしれません。

「明るい」や「暗い」などあいまいな表現ができないように、写真には「適正露出」という言葉が存在します。

この「適正露出」を基準にすることで「適正露出より明るい」「適正露出より暗い」という、感覚ではなく数値的な表現ができるようになります。

というわけで、今回は「適正露出」を理解しましょう。

そもそも「露出」って何?

「露出狂」と言う言葉があるように「露わ(あらわ)にする」ことを「露出する」と言います。

じゃあ何を露わにするんでしょうか?

そんなに興奮しないで落ち着いて聞いてください。

写真の場合、シャッターで隠されていたセンサーを露わにする、つまりセンサーに光を当てることを「露出」と言います。(「露光」と言うこともあります)

例えば、シャッタースピードをめちゃくちゃ遅くすることを「長時間露出(長時間露光)」と言ったりします。

このようにセンサーに光を取り入れることを「露出」と言いますが「どれくらいの光の量を取り入れるか」が写真の明るさに影響します。

当たり前ですが、たくさんの光が入ってくれば写真が明るくなり、少ししか光が入らなければ暗くなります。

適正露出の定義

そもそも「適正」なんて言葉を使っていることが写真を難しくしてるんですよ。

「適正」って聞いたら「正しい」と思いますよね?

「基準の明るさ」がないと、それよりも「明るい」とか「暗い」という話ができないから「基準」を決めるのに、そこに「適正」なんて言葉を使ってしまうからみんなが困惑するんです。

「明るさ」に正しいも間違いもないんです。

さて、ボヤきはこれくらいにして、とにかくそのような「基準となる明るさ」のことを「適正露出」と言うんですって。

決まっちゃってることなので諦めて覚えてください。

じゃあ、それはどんな明るさなのかと言うと、

適正露出とは
明るくもなく、暗くもない自然に見える明るさのことで、白でも黒でもない反射率18%のグレーのことです。(ニュートラルグレーとも言われます)

この画面を見ているあなたの液晶画面の明るさや周囲の明るさなどによっても見え方が人それぞれですが、とにかく自然に見えるグレーです。

この明るさを「適正露出」として定義しますので、これからはこの明るさを基準にして「明るい」とか「暗い」と言うことができますよ。

どの部分が適正露出か

そうは言っても、写真には明るい部分や暗い部分があって、均一な明るさの写真なんてありえません

もしあるとしたら画用紙などを画面全体に入れて撮影するような場合でしょうか?(それでも光の当たり具合によっては明暗差があるかもですが)

この場合には(僕はやったことありませんが)真っ白い紙を撮影しても、真黒い紙を撮影してもカメラが判断してグレーになるよう写るはずです。

そんな極論はおいといて、実際の写真の場合を考えます。

例えば、海の写真を考えてみましょう。

写真の中には白い雲があったり黒い岩があったりして、明るさの異なる部分が無数にありますよね?

「どの部分が反射率18%なの?」と思うかもしれません。

実は平均値を取っています。

明るい部分は反射率が高いし、暗い部分は低いですから、平均値を取るしかないのです。

このため、当然ですが、明るい部分は反射率18%よりも明るいですし、暗い部分は18%よりも暗くなります。

つまり様々な明るさが分布してますよね?

もうお気づきかもしれませんが、これをグラフ化したものがすでに学んだヒストグラムなんですよ。

ヒストグラムを解読せよ

測光モードを理解する

明るさの平均値を取ると言いましたが、カメラには明るさを測定できる測光機能があって、レンズを通して入ってきた光の量を計算して適正露出値になるような制御をします。

ですが、画面全体を単純に平均するのはあまり賢いとは言えません

なぜなら、例えば風景写真の場合、太陽を隅っこに入れるとカッコよかったりしますが、主要被写体でもないし隅っこにあるにも関わらず極端に明るいのでそれだけで平均値を上げてしまいます

また、夜に人物の写真などを撮ると背景が真っ暗なので、全く重要ではない真っ暗な部分が平均値を下げてしまいます

要するに、被写体も背景も全てを同じように配分して単純に平均してしまうとあまりよろしくないわけですよ。

なので、被写体に配分を多くした都合の良い平均値(加重平均)を取りたいですよね。

これを実現するために、カメラには測光モードという機能があります。

カメラは撮影者の意図を読むことができませんので、平均値を計算するエリアを区画ごとに分けて都合よく平均化します。(メーカーによって考え方が若干異なることもあります)

ほとんどのカメラに測光モードを選択できる機能がありますが、メーカーによって呼び名が異なります。

ただ、超大まかに分けると、

・画面全体を測光する
・中央部を重点的に測光する
・特定の場所のみを測光する

と言う3つのモードに分けられます。

一般的には画面全体の測光モード(マルチエリア測光、平均測光、評価測光などメーカーによって呼び名は異なります)にしておけば問題ないでしょう。

画面全体といっても(メーカーの考え方によりますが)完全な単純平均ではなく、中央部の比重を少し大きくするような平均の仕方(加重平均)をしていて、どんな撮影条件でも最も失敗が少ないモードです。

僕も普段はこのモードにしていて、特別な事情がない限りモードを変えることはありません。

次に中央部を重点的に測光するモード(中央重点測光)は画面全体を測光するモードに比べると、さらに中央部に比重を置いていますので、中央に被写体を大ききく配置するような場合には有効です。

ただ、中央重点測光にしていると人物などでは有効な場合が多いですが、風景など画面全体のことを考えるような場合には好ましくない場合があります

人物撮影の時に画面全体の測光モードにしておいてもそんなにおかしくなることはないので、僕は中央重点測光モードはあまり使いません。

最後の特定の場所だけを測光する(スポット測光)は、平均というよりはそのエリアのみで測光するので、周囲の明るさは無視してとにかくピンポイントでその場所だけの明るさを適正露出にするモードです。

よほど特殊な事情でもない限り使わないモードです。

他にも機種によってより細分化されたモードがあるかもしれませんが、とにかく画面全体を平均的に測光するモードが最も使いやすいと思いますし、普段はあまり設定変更をしない項目ですので、とりあえずは画面全体を測光するモードにしておくと良いと思いますよ。

ちなみに、何枚か撮影して毎回明るさがバラつくような場合は、知らないうちにスポット測光とかになっていることもありますので、そのような時には設定を疑ってみる項目の一つになります。

それと最近はスマートフォンだけでなくデジタルカメラにも顔認識機能が備わっていることも多いです。

顔の認識ができるということは、人物が被写体である場合にはその顔の明るさに比重を置いた測光をしてくれるモードもあると思います。

ただ、風景を撮りたいのに意図しない人物が入って、そちらに平均が持っていかれる場合もありますので、使用時には注意してください。

測光モードについて理解できてきたら、使用目的に応じてモードを変えるのもアリかと思いますが、スマートフォンとかでない限り、画面全体を測光するモードにしておくのが無難でしょう。

適正露出は全然適正ではない

これで写真の明るさの基準値を知ることができました。

カメラは機械ですから設定された基準値、つまり「適正露出」になるような写真を撮ってくれます。

しかし名前こそ「適正露出」ですが、それは定義された基準値にすぎません

適正露出よりも明るい写真の方が良かったり、暗い方が雰囲気があったりすることがほとんどです。

そしてその調整はあなた自身で行う必要があり、それこそが「あなたにとっての適正露出」となるのです。

その調整の方法は別の記事で改めて書きますので、この記事ではまず適正露出について理解できればOKです。

まとめ

ではこの記事をまとめます。

・露出とはセンサーに光をあてること
・適正露出とはニュートラルグレーという基準の明るさのこと
・測光モードを変えることで測定する範囲を変えることができる
・適正露出と自分が良いと思う明るさは必ずしも一致しない

注意
この記事ではわかりやすさを優先していますので、必ずしも正確な表現をしていないことや、あえて説明していない部分などもありますのでご了承ください。