主に暗い状況などで使用する「ストロボ」。
実は「ストロボ」という名前は米国のストロボ・リサーチ社の商標ですが、一般的に広く浸透して使われています。
他にも「スピードライト」「エレクトロニクスフラッシュ」など、他社の商標を使いたくないメーカーが独自の名前をつけていますが、「ストロボ」か「フラッシュ」が一般的に通じやすいかと思いますので、僕も「ストロボ」もしくは「フラッシュ」という言葉を使っています。
さて、そのストロボって毎回同じ強さ(発光量)でピカピカ光ってるわけではないんですよ。
ストロボが光る強さ(発光量)を決めるにはいくつか方法がありますが、最も一般的なのは「TTL調光」という方法です。
TTL調光とは
シャッターを押し切る直前にストロボがプレ発光して被写体に弱い光を当て、跳ね返ってきた光を「カメラのレンズを通して測光」し、シャッターが切れる際のパワー(発光量)を決定する
というような仕組みです。
このことで撮影者はストロボの発光量についてはあまり考えなくてもカメラの内蔵ストロボ(もしくは外付けストロボ)が自動的にコントロールしてくれます。
今回はこのTTL調光の仕組みついて説明します。
ストロボは第4の要素
ストロボは何のために使うのか?
それはもちろん「暗いから」。
だけではないんですよ。
修学旅行に同行するカメラマンさんやブライダルカメラマンさんなどが、日中でもカメラに外付けのちょっと大きめなストロボをつけているのを見たことがないですか?
明るい日中でも日差しが強くて顔に影が出てしまうような場合には、ストロボを光らせて影を弱くすることがあるんです。
また、人物を逆光で撮影する際にはプラス側に露出補正することで人物をちょうど良い明るさにできますが、その場合には背景が明るすぎになってしまいます。
このような場合には日中シンクロと言って、背景がちょうど良い明るさになるような露出にして、暗くなってしまう人物にはストロボ光をあてることで背景も人物も思い通りの明るさにすることが可能です。
このようにストロボはただ暗い(光が足りない)時に使うだけでなく、様々な使用方法があるんです。
これまでに学んだ露出をコントロールする3つの要素
・絞り
・シャッタースピード
・ISO感度
に加えて、ストロボ光も自らコントロールできる第4の要素として考えられますね。
TTLとはThrough The Lens
そのストロボのパワー(発光量)のコントロール方法もいくつかありますが、現在はTTL調光が最も一般的に使われています。
TTLとは「Through The Lens」の頭文字をとったものです。
「レンズを通る」というような意味ですね。
どういうことかと言いますと、カメラ内には露出計があり、レンズを通して入ってきた光の量を測光して最適な露出値を設定してくれました。
この時、シャッターを切る直前にストロボを発光させる(「プレ発光」と言います)ことで、被写体にあたって跳ね返ってきたストロボ光も(自然光と一緒に)レンズを通して入ってきます。
カメラが露出値を決定する際に、レンズを通して入ってきたストロボ光も加味することができるので、絞り・シャッタースピード・ISO感度に加えてストロボ光のパワー(発光量)もコントロールして全体的にちょうど良い明るさにすることができるのです。
ちょっと難しそうですが、これらはカメラが自動的にコントロールしてくれますので、あなたは特に難しいことを考えなくても大丈夫な場合がほとんどです。
ちなみに、デジタルカメラはTTL調光にしている場合にはシャッターが切れる前に必ずプレ発光が必要ですから、撮影時によく見ているとストロボが少なくとも2回以上光っている(複数回プレ発光するカメラもあります)ことを確認できると思います。
TTL調光をすることでカメラの露出計を使える
ストロボをTTLにしておけば基本的にはカメラ側で発光量をコントロールしてくれます。
しかも、カメラ内の露出計を使っていますので、露出補正などを行ってもカメラが自動的に調整してストロボの発光量を含めた補正をしてくれます。
また、カメラ内の露出計を使えることで、室内などでは外付けストロボを被写体ではなく壁などに向ける(「バウンズ発光」と言います)ことで、ストロボ光が直接被写体に当たらず、より自然なライティングのコントロールも簡単にできます。(ブライダルの時にはよく使うテクニックです)
このようにTTL調光をすることでカメラ内の露出計を使えますからカメラとストロボを同時にコントロールできますが、稀にに自分の意図しない制御をされることがあり、この場合にはちょっと悩んでしまうかもしれません。
例えば、「露出補正」で写真をもう少し明るくしたい場合、カメラやメーカーのプログラムによっては
・ストロボ光の発光量を強くすることでストロボ光が当たる被写体だけを明るくする(被写体が明るくなる)
・シャッタースピードを遅くしてストロボ光ではない自然光(自然に入ってきくる光)を多くすることで写真を明るくする(背景が明るくなる)
・両方を少しずつ調整してどちらも明るくする(被写体も背景も明るくなる)
などの方法が考えられます。
これは機種や外付けストロボの組み合わせなどにもよるので、どのような結果になるかはケースバイケースです。
そして、機種によってはストロボ側で発光量による露出補正をしたり、カメラ側で自然光側のみの露出補正ができたりと、とにかく様々です。
ですので、あとは撮影しながらあなたの持っている機材の特性を理解して、どのようなコントロールをすれば自分の好みの調整方法になるかを知っておくと良いでしょう。
もちろんこれはストロボを使う場合のみの話で、ストロボを使わない(自然光のみ)の撮影の時には、そこまで複雑に考える必要はありません。
ちなみに、内蔵ストロボはもちろん問題なく制御できますが、外付けのストロボの場合にはカメラとの組み合わせによっては使えない機能があったりしますので、外付けストロボを購入する際には十分確認する必要があります。
TTLでも苦手なケースがある
夜景や花火などをバックに人物を撮影する際にストロボを使った場合、
「背景は思ったよりも暗すぎて、人物の顔は白飛びしてしまった」
という経験はないでしょうか?
これはストロボを自動的に調整させる際の苦手なパターンの一つです。
カメラ的には、背景が暗いのでストロボ光が届く被写体にできるだけたくさん光を当てて「全体的に見ると適正露出」にしてくれたので良い仕事をしたハズです。
しかし、これではあなたの思っていた写真とは異なりますよね。
このような場合の対策が最も難しのですが、カメラがどのような制御をしているのかを考えて逆にそれを利用することである程度のコントロールは可能です。
例えば、画面内に写る人物の面積を広くする(近づいて撮る)ことで、ストロボ光の跳ね返りが多くなり、結果としてそんなに強く発光しないので人物が白飛びしなくなることもあります。(ただし、この場合は背景は暗いままですが)
もちろん世の中にはこのようなケースが多いので、カメラメーカーもカメラ制御のプログラムを考えて夜景モードなどを搭載している場合もあるでしょう。
とにかく、カメラやストロボの機種によって制御方法が異なるため、的確なアドバイスができないのが心苦しいです。
ちなみに僕はオートで思い通りにならない時にはあっさりと諦めてカメラの露出モードもストロボの発光量もマニュアルにしてしまうことがあります。
適正な露出を探すのにちょっと時間がかかることがありますが、カメラが勝手に制御しない分、すべて自分で決められるので逆に思い通りにしやすいからです。
デジタルカメラなのでいくらでも撮り直せますから、時間のある時にいろいろといじってみれば、マニュアルでも意外といけることが実感できると思いますよ。
ちなみにマニュアルで発光量を調整する場合にはTTL調光のようにプレ発光はしません。
また、カメラに内蔵のストロボの場合には機種によっては発光量をマニュアルで調整できないこともあります。
まとめ
いかがでしょうか?
今回はストロボを使う際に最も簡単なTTL調光の方法について説明しました。
TTL調光の特徴
・「プレ発光」することでシャッターが切れる前にレンズを通して測光して最適な発光量を自動的に決める
・露出補正などを行ってもカメラ側が自動的に制御してくれる(ただし、思い通りの制御にならない場合もある)
・カメラの露出計を使えるのでバウンズ発光なども可能
・TTL調光が苦手なシーンもあり、その場合には制御の特性を逆手にとってコントロールするか思い切ってマニュアルにするのもアリ
機種によっては他にも様々な制御方法がありますので興味のある方は調べてみても面白いかもしれません。
また、スレーブ発光といって無線でコントロールしたり、複数のストロボを同時に使ったりと、ストロボの世界は本当に奥が深いです。
まずは基本的な制御から覚えましょう。
注意
この記事ではわかりやすさを優先していますので、必ずしも正確な表現をしていないことや、あえて説明していない部分などもありますのでご了承ください。