思い出の一枚【唐馬No.1「アザハタの根」】

思い出の一枚

自然の写真は自分ではコントロールできない部分がたくさんあります。

天気や風などもそうですし、水中写真では透明度や流れなども自分では何ひとつ思い通りにできないので運任せです。

今回はそんな「運」にも味方されたお気に入りの写真を紹介します。

 

座間味島に「唐馬No.1」というダイビングポイントがあります。

隣には「唐馬No.2」というポイントがあって、そちらの方が生物が豊富だし水深も浅いので人気があります。

ですが、僕はNo.1も好きなんです。

浅いエリアはNo.2に比べると少し寂しい感じがしますが、水深35m付近にポツンと一つだけ魚の集まる「」があり、そこだけは様々な魚が集まっていてとても賑やかなんです。

中でも「キンメモドキ」という密集して群れる魚をはじめとしたカラフルな小魚たち、それを捕食する赤くて大きな「アザハタ」がひとつの生態系を作っているのが見どころでしょう。

アザハタの根」と言われています。

ただ、とにかく深いくて遠い場所で、しかも周りには何もありません。

水深が深いので初心者のお客さんと一緒には行けませんし、大人数で行っても小さな根がひとつしかないのでやはり楽しむことはできません。

そういう理由でどうしてもNo.2の方に行くことが多いのです。

 

ある日、唐馬No.1で一眼レフカメラを持って潜る機会がありました。

これはチャンスとばかりに「アザハタの根」を目指します。

ダイバーなら知っていますが、水深35mには滞在できる時間がごく僅かしかありません。

この水深で空気と時間を使ってしまうと、ダイビングの後半に他のことをする余裕はありません。

それでも、めったにないチャンスなので、他の被写体のことは考えずに一直線にアザハタの根に向かって、限られた時間の中で撮影します。

 

冒頭に書いた通り自然の写真は自分ではコントロールできない要素がたくさんあります。

水中生物も然り。

ただ、この時には「アザハタがキンメモドキをかき分けて僕の方に向かってきてくれる」という奇跡が起きました。

1回しかチャンスはありませんでしたが、タイミングよくシャッターを切ることができました。

個人的には、なんとなく「宇宙感のある写真」だと思っていてとてもお気に入りの一枚となりました。

FUJIFILM S5Pro&10.5mmフィッシュアイ(マニュアル露出,f/5,1/60,ISO100

ちなみにこの写真は僕がダイビングインストラクターとして所属しているNAUIという指導団体で、沖縄県内でアドバンスコースを受けるともらえる認定カードのデザインの一つとしても使ってもらっています。